芦北・水俣地域のインバウンド調査・分析とインバウンド勉強会
熊本県の県南、不知火海を望む水俣市・芦北町・津奈木町。海岸線と夕景、肥薩おれんじ鉄道、湯の児・湯の鶴の温泉、和紅茶や亀萬酒造、つなぎ美術館、環境モデル都市・水俣の取り組みなど、海外の旅行者の関心と合致する素材が揃っているエリアです。一方で熊本県内の外国人宿泊実績は熊本市と阿蘇地域に大きく偏在しており、県南までインバウンドの波がまだ届いていないという状況がありました。熊本県芦北地域振興局から熊本県旅行業協同組合への委託事業として、調査・分析・戦略提案と、地域事業者向け勉強会の企画運営までを担当しました。
熊本城 桜の馬場 城彩苑で外国人観光客に直接話を聞く
「県南地域のことを聞きたい」と言っても、当の県南エリアに外国人観光客がまだほとんど訪れていない以上、調査は「熊本に来ている外国人観光客に、県南のことをどう知ってもらうか」を起点に組み立てる必要がありました。
熊本城の桜の馬場 城彩苑など主要観光地で、対面とQRコード配布の両方で外国人観光客にアンケートを実施。台湾を中心とした20〜30代のFIT層が多くを占めるなか、「水俣・芦北を知っているか」「もし行くとしたら何を体験したいか」を直接尋ねていきました。
知らないと答えた方が多数を占める一方で、自然景観や温泉、和紅茶、観光列車といった地域の固有資源には確かな関心が見えてきました。「認知の壁」と「資源との合致」が同時に確認できたことが、その後の戦略設計の足場になっています。
地域の事業者を一軒ずつ訪ねる
調査のもう一方の柱は、地域事業者へのアンケートと訪問ヒアリングです。宿泊・飲食・観光・運輸の4業種を中心に、肥薩おれんじ鉄道、水俣病資料館、道の駅たのうら、天の製茶園、亀萬酒造、Guest House Tomimori、和の香、湯の児 海と夕やけ、an sauna、福田農場、津奈木の宿 け・せら・せらさんなど、意欲を持って取り組んでいる事業者の皆さまにお話を伺いました。
聞こえてきたのは、「歓迎したい気持ちはあるが、何から始めればいいか分からない」「個店単位で発信しても届かない、エリア全体で動きたい」「翻訳アプリは使っているけれど、地域の歴史や食材の専門用語までは伝えきれない」「OTA(海外予約サイト)に出したいが、手数料と手続きの壁がある」――現場ならではの率直な声でした。
勉強会で「なぜ取り組むのか」を共有する
調査の中間と最終の二段階で、地域事業者・自治体担当者向けのインバウンド勉強会を開催しました。
第1回では、調査の中間報告に加えて、ワークショップを実施。「どんな人に来てもらいたいか」「何を体験してもらいたいか」を事業者ご自身の手で言語化していくことで、その後の議論の前提を地域内で揃えていきました。
第2回では、調査結果と戦略の方向性を共有し、令和8年度に向けた合意形成の場として活用。完璧な多言語対応や大規模な設備投資を一気に進めるのではなく、動画・SNSで雰囲気を伝える、Google Mapの英語表示を最新化する、といった明日から始められる小さな一歩から着手していくことを、地域内で確認しています。
見えてきたものと、次の展開
調査と勉強会を通じて、地域には外国人観光客を受け入れる素材も意欲もすでに揃っていること、そして個店単独では届かないからこそエリア横断的な発信と受入環境整備が要であることが、はっきりと浮かび上がってきました。
3カ年のロードマップとしては、令和8年度を基盤整備・試行期、令和9年度を商品拡充・プロモーション、令和10年度をブランド確立・自走化と位置づけ、優先度の高いアクション(エリア共通の動画・SNS制作、OTA掲載の一括支援、多言語ツールのエリア統一整備、二次交通情報の英語化、受入研修の伴走支援)を、観光庁・農水省・文化庁の補助金とのマッピングを添えて提案しました。
調査して終わり、報告書を出して終わりにしないこと――地域が補助金を投資の手段として位置づけ、自発的に「次に何をしようか」と動き始める状態をつくること。それが本事業の本来の目的です。勉強会で芽吹いた事業者との関係性を起点に、令和8年度の実装フェーズへとつなげていきます。
主催・連携先
委託元:熊本県(県南広域本部 芦北地域振興局 総務振興課) 受託:熊本県旅行業協同組合
対象地域:水俣市・芦北町・津奈木町
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