アート×食の観光体験コンテンツ造成
熊本県津奈木町で2024年11月9日(土)・10日(日)に開催されたアートと食の体験型イベント「つなぎワンダーランド」。観光庁「地域観光新発見事業」採択のもと、津奈木町地域商社推進協議会が実施した「つなぎアートと食の魅力創造事業(アート&ガストロノミーツーリズム)」の中核プログラムです。
Heuteは、株式会社食文化様とともに本事業に参画し、企画立案から体験コンテンツの造成、当日の運営、事業全体の効果検証・振り返りまで、事業期間を通して伴走しました。
津奈木町という町について
津奈木町は、約40年にわたり町ぐるみでアートの推進に取り組んできた町です。
かつて水俣病の惨禍を経験した町が、芸術文化と環境配慮型農業を通じて再生を目指してきた歩み。
町内には屋外彫刻が点在し、つなぎ美術館やつなぎ百貨堂を起点に、アートが日常に根づく独特の風景があります。
ただ、その魅力が町の外に十分に伝わっていない、という課題もありました。本事業のテーマは、町に既にある人、自然、食、アートを、つなぎ直して、町の外にも届くかたちに編集することでした。
「やりたいこと・できること・やってきたこと」の交差点でつくった体験
体験コンテンツを「いくつ作る」ことが先にあったわけではありません。津奈木町の事業者・生産者・作家のみなさんと一つひとつ対話を重ねながら、「やりたいこと」「やれること」「できること」が重なるところを探っていって、結果として7つの体験が生まれました。
たとえば、「アートと食」というテーマを設定したときに考えたこと。
アートを食で表現するって、どうすればできるんだろう?
そんな問いから、「クッキーをキャンバスにしてみよう」という発想が出てきました。
津奈木町のスイーツ店「あん・さんく」の長友美波さんと、画家の大平由香理さんにご相談しながら、
食べられるアートとしてのアイシングクッキー体験ができあがりました。
それぞれの体験が、こうした地域の事業者の方々との対話からできあがっています。
1. 食べられるアート!アイシングクッキーで津奈木を描こう
クッキーをキャンバスに、津奈木の風景や自然をアイシングで描く。大平さんの描いた絵をモチーフにした金型のほか、レモンなどさまざまなクッキーをベースにお客さんそれぞれに思い思いの絵を描いてもらいました。
協働:あん・さんく(長友美波さん)/アイシングクッキーLuLu(かほさん)/画家・大平由香理さん
2. レモン狩りとレモンシロップづくり体験
「まる農園」丸田良友さんの果樹園で、希少な大型レモン「璃の香」を収穫。シロップに仕込んでお土産として持ち帰る、収穫から加工まで一気に体感する設計としました。オリジナル瓶にもアートの工夫を施しました。
レモンシロップのレシピは「あん・さんく」長友さん考案。
3. つなぎ美術館入場券つき美術館で愉しむ「つなぎアート・アフタヌーンティー」
つなぎ美術館のテラスで、地域の食材を使った専用のアフタヌーンティーを実施しました。津奈木町産の食材を活用したメニューをみなまた和紅茶とともに味わえるプレミアムな体験となりました。
監修としてフードプロデューサーの岩谷貴美さんにご協力いただき、町内外のシェフ・パティシエ・ティーソムリエの方々と地元の作り手をつなぐ仕立てにしました。
- スイーツ:江森宏之さん(MAISON GIVRÉE)、長友美波さん(あん・さんく)
- セイボリー:村田明彦さん(荒木町「鈴なり」)
- ドリンク:大塚佳寿子さん(ティーソムリエ・和の香)、お茶のカジハラ(梶原敏弘さん)
- スコーン:TABLIER(岩崎智佐美さん)
外から来てくださった方々の技と、地元の素材・作り手。
両者を交差させることで、津奈木町でしか体験できないアフタヌーンティーになりました。
4. 世界で1枚のTシャツ・アクションペインティング
大胆に絵の具を使い、自分だけのオリジナルTシャツをつくる体験。筆以外にも水鉄砲などをご用意して豪快に真っ白のTシャツに描く姿が見られました。
5. 亀萬酒造のひやおろしとお酒に合うおつまみを堪能する会
町の酒蔵・亀萬酒造のお酒と、「鈴なり」村田シェフによる津奈木食材のおつまみを、1品・1杯から気軽に楽しめる仕立てに。京都の楽焼作家・津田友子さんによる、亀萬酒造と津奈木からインスピレーションを得たオリジナルぐい呑みも販売しました。
6. 青写真をつくろう大学
熊本出身のアーティスト・キノシタユースケさんと、サイアノタイプ(日光写真)をつくるワークショップ。「青写真を思い描く」が未来を意味する言葉である一方、技法そのものは懐かしい体験として設計しました。
7. 手作り水彩ワークショップ「マイパレットをつくろう」
台湾出身の画家・黃品玲(ピンリン・ホワン)さんと一緒に、日本画で使う胡粉からゼロで水彩絵の具をつくるという、和の色調を体感するワークショップ。深い学びを得られるワークショップとして参加された方にも好評でした。
価格と販路の設計
体験コンテンツの価格設定も、地域の方々と一緒に丁寧に検討しました。町内向けの既存価格をそのまま使うのではなく、津奈木町の外から訪れる方が、その体験に価値を感じて支払える価格を意識して設計。プレミアムな体験は、それにふさわしい価格で。気軽に立ち寄れる体験は、ふらっと参加できる価格で。コンテンツごとに、たとえばアフタヌーンティーでは福岡や熊本市内からのヌン活に興味関心の高いお客様をターゲットとして、普段どのような行動をされている方が興味を持ってくれるか、「交通費+体験費」を考えながら設計しました。
販路は、専用Webサイトに加えて、熊本県の観光予約プラットフォーム「くまもっと旅行社。」、じゃらんなどOTAサイトに掲載し、事前予約決済ができる仕組みを構築しました。
プロモーション設計——一過性のキャンペーンにしない
イベント告知のためだけの広告ではなく、津奈木町への関心がイベント後にも続いていく仕組みとして設計しました。
杉本琢弥さんと一緒に、津奈木町の食とアートを巡るコンテンツをつくる
PRの軸に据えたのは、熊本出身のシンガーソングライター・杉本琢弥さんとの協働です。TikTok「熊本の彼氏」として総フォロワー160万人を超える杉本琢弥さんは、イベント当日はスケジュールの都合で来訪が難しい状況でした。
そこで考えたのが、事前に杉本琢弥さんに津奈木町を訪れていただき、 イベントで体験できるコンテンツを先取りで一緒に体験してもらうという設計です。
名前と町名をかけて、白いつなぎ服を着てもらいながら、レモン狩りでレモンを収穫してシロップを仕込み、アイシングクッキーで食べられるアートをつくり、青写真でくまモンと自分の写真を現像し、でこでこでこぽんケーキをみなまた和紅茶と楽しんでいただく。7つの体験の中でいくつかのアート×食の体験コンテンツを、杉本琢弥さんが先取りで体験する動画として記録しました。

杉本琢弥さんはタイトなスケジュールの中、本当に気持ちよく協力してくださって、町の景色のなかで撮影したオフショットは、どれも素敵なものになりました。それらの写真はつなぎ百貨堂内にフォトコーナーを作ったり、専用Webサイトのスペシャルコーナーに掲載したり——これが想像以上の反響を呼びました。

”推し”と「同じ旅をしたい」というファンの方々
イベント当日、私たちが嬉しい驚きだったのは、杉本琢弥さんと同じ体験をしに来てくださるファンの方々がたくさんいらっしゃったことです。動画で見た杉本琢弥さんと同じレモン狩りをしたい、同じアイシングクッキーを作りたい、同じカフェでお茶を飲みたい——そんな聖地巡礼のような形で、津奈木町を訪れる方が次々と現れました。
事後アンケートでも、「杉本琢弥さんがおすすめしてくれたので津奈木町初めて来ました」
「推しの杉本琢弥さんが来てくれたのもあり、また津奈木町に立ち寄る機会が増えそうで嬉しい」
といった声を多くいただきました。
つなぎ百貨堂内には、杉本琢弥さんが着用したつなぎ服の展示、等身大パネル、サイン入りで展示された制作アイテム、そしてフォトブースを設置。ご本人が当日いらっしゃらなくても、ファンの方々が杉本琢弥さんを感じながら町を楽しめる仕掛けを仕込みました。
他にも、多面的に発信
杉本琢弥さんとのコラボに加えて、
- 熊本県「営業部長兼しあわせ部長」くまモンにも各体験にご参加いただきました
- 専用Webサイト、Instagram(@tsunagi.wonderland)を町の継続資産として開設しました
- 肥薩おれんじ鉄道との連携で、「津奈木駅」を期間限定で「つなぎワンダーランド駅」に。オリジナル切符風カードを配布しました
- 東京の人気シェフや食のインフルエンサーの方々が、それぞれの形で発信に協力していただきました
- プレスリリース配信から事後のイベントレポートまで、毎日新聞、熊本日日新聞、毎日フォーラム、津奈木町広報誌『TSUNAGI』表紙など、多数のメディアに取り上げていただきました
これから
つなぎワンダーランドで地域の方々と一緒につくった連携の輪は、町に少しずつ浸透してゆく感触がありました。今後も、地域の方々がより主体となって動いていけるかたちを目指して、継続的に伴走していければと思っています。
外から技や視点を一度入れることで、地域の方々が自分たちの素材を見つめ直すきっかけになる。
そういう関わり方を、これからも続けていきたいと考えています。
プロジェクト概要
- 事業名:つなぎアートと食の魅力創造事業(アート&ガストロノミーツーリズム)
- 採択:観光庁「地域観光新発見事業」
- 事業主体:津奈木町地域商社推進協議会
- 連携先:株式会社KASSE JAPAN、くまもとDMC、水俣・芦北観光応援社、一般財団法人津奈木町地域振興公社(つなぎ百貨堂)、つなぎ美術館、株式会社食文化、株式会社WEBTATEなど
- 協力:熊本県東京事務所
- 中核イベント開催:2024年11月9日(土)・10日(日)
- Heuteの担当:事業全体の企画立案、体験コンテンツ造成、価格・販路設計、プロモーション設計、運営伴走、効果検証・振り返り
- 関連リンク:
- イベント特設サイト
- プレスリリース
- Instagram @tsunagi.wonderland
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